初めて西表島へ行ったのは2005年7月。その時シュノーケルを体験して、今までで休んでいた感性の扉が再び開いた気がしました。衝撃の体験。外からみえる海と、覗いてみた海は全然違いました。異次元の感覚。色にあふれ、躍動する波。手をのばせばすぐ近くにいるのに捕らえることができない魚たち。それらは日々出会う人達や身辺におきる事象とも似ています。私にとって全てが愛おしい光と陰の世界です。そんなこんなを書いてみたいと思うようになりました。少しずつ少しずつ・・・。 えりさのプロフィール

14歳の夏の午後、雲を見ていて詩が浮かぶ。この時から詩や童話を書き始める。たくさんの寄り道をして現在に至る。染織・パン作り・パーカッションなど興味の範囲が広く趣味とよべるものがない。よく変人扱いされるが実は極めて常識的でやることはかなり古風。えりさの名の由来はアンデルセンの「白鳥の王子」より。

大竹英洋さん プロフィール

1975年生まれ。一橋大学社会学部卒業。1999年、初めてミネソタ州北部の森を訪れて以来、写真家としての活動を開始。現在、カナダ北方林を含めた湖水地方“ノースウッズ”で、野生の意味・自然と人間との関わりを問う作品を制作し、写真展や絵本などで発表している。主な著書に、『春をさがして カヌーの旅』(『たくさんのふしぎ』、2006年4月号、福音館書店)、『ノースウッズの森で』(『たくさんのふしぎ』2005年9月号、福音館書 店)。

Vol.4 水辺を旅して 2
☆森について
「見せていただいたミネソタからカナダにかけての風景は北欧に似ていますね」
「とてもよく似ているらしく、実際、北欧からの移民も多いです。祖国と似ていて落ち着くんでしょうね。」
世界に残された原生林の約四分の一を占める北米大陸の森林地帯。北欧の森は管理されて美しく、下草は切りそろえられ、間伐され、原始の森ではないそうです。カナダの森は、倒木はそのまま、荒れ放題の森もあります。フィンランドの森林管理管がやってくると、「こんなのは森でない」と言うそうです。けれど、美しいという言葉は人間の側から見た言葉。手が入ってない森は、原始のままで生きている、と大竹さんは言います。一度手を入れた里山は、手をいれ続けなければ荒れてしまうそうです。

☆文化
「よくカナダはヨーロッパと比べると歴史が浅いといわれます。でもヨーロッパの文化、たとえば手の込んだフランス料理はたしかに長い時間をかけて洗練された一つの文化です。一方、カナダの森では、自分で狩ったムース(ヘラジカ)をさばいて、バーベキューにすることが身近だったりします。ソースをかけず、自然から直に得た肉にかぶりつけるプリミティブな体験。グルメとはちがう豊かさがあると思います。」
「それと、数千年もこの地で暮らしてきた先住民の文化があります。彼らが生み出した旅の道具には、その土地の自然ならではの知恵がつまってる。だから、この土地をカヌーで旅すると、自然とのつながりを深く感じることができるんです。」

☆森が燃える
「今回の写真の中で、落雷によって発火、森に火が移り枯れて、時をかけて再生していくのがありましたね、あれはすごかった。世田谷区くらいの面積の森があっという間に燃えてしまう・・・一年たって「fireweed(ヤナギラン)」というピンクの花が咲き始めている写真が、荒野の中で美しく、一片の希望のように見えました。たくましく、美しく。実際に、森も生と死を繰り返しているわけで、ジャック・パインという松は摂氏45度、つまり山火事でもおきないと種がはじけないんですね」
「着実に淡々と繰り返される自然のプロセス。なにか事件が写っているわけではありません。だから展示する場所や方法を工夫して見る側の想像力を喚起する必要があると思っています。むずかしいですが、ぜひ伝えたい内容ですね。」そう語る大竹さん、私は子供たちに届けたいです。

☆ビーバー
「カナダはビーバーが作った」大竹さんがそう言った時、知識のない私は、何か聞き間違えたのかなと思いました。ところがビーバーすごいんです。スライドを見せていただいた時、冬にビーバーの住んでいる巣の天井の穴から、蒸気がでているというのが愉快でした。3家族位が一緒に暮らしているそうです。ヨーロッパでビーバーがいなくなった時、毛皮商人たちはカナダにやってきました。ビーバーは毛皮として人気があったほか、冬を越すための食糧や、香水の原料としても貴重な動物だったようです。ビーバーを追ってたくさんの人がカナダにやってきた・・。そして、ビーバーはダム(巣)を作って水を綺麗にする。カナダの自然と歴史を語るうえで、はずせない生き物のようです。

☆ブルーベリー
今回の個展では、大竹さんが森で採取した、野生のブルーベリーを使ったパウンドケーキと、スコーンにはブルーベリージャムを添えました。たくさんの方に味わっていただきました。ブルーベリーに限らず、川ではマスをつったりして、森にいる間は、光熱費も食費もあまりかからないという大竹さん、たくましいです。人間贅沢をしなくても生きていけるのです。シンプルにシンプルに。

☆カリブー
日本での呼び名はトナカイ。今回の写真展では、湖を渡るカリブーの写真が圧巻でした。ひづめが丸くて泳ぐのにも、深い雪の上を歩くのにも適しているそうです。毛と毛の間には空気の層ができていて沈まないそうです。カリブーは泳ぐのが得意。オオカミから身を守る為、湖の中の島に渡る為、進化した機能なのでしょう。

書き終えて

「僕自身の生き方は、撮り始めた時から、今も何も変わっていないです」そう語る大竹さんは、マイペースなどという言葉を通り越して、自分の生き方を貫いている意志の強い方だと思います。おしつけがましいところや強い感じはなく、いつも静かな話し方で、人の話も熱心に聞きます。むしろソフトで、自然体で生きているようにみえるところが素敵です。
彼の作品の一つに、生まれて間もない小鹿が、木の根元に伏せて目をつぶっている写真があります。平均律での一回目の個展以来、この写真の葉書は、ベストセラー的に売れ続けています。私はこの作品ばかり話題にされるのが嫌で、そんな話を大竹さんにしたところ、「・・・見てしまったものを無理して撮らないのも変だから・・・」と。でも、そういう場面に遭遇したり、撮れたということは凄いと思います。彼の言葉を聞いて、表層ばかり捉えられるのを、危惧する必要はなさそうだと安心しました。裾野は広く、広く。
機会があったら、ワタリガラスが、新雪に羽のあとをのこした写真を見せてもらってください。この写真は詩のワンフレーズのようです。朝のりんとした大気、透明な光、青白い雪、今飛び立ったばかりのように、鳥の温かな息遣いまで感じられます。気配・・・底には常に大自然の音が流れています。辛抱強く耳をそばだてれば、誰にでも聞こえてくるはずです。

というわけで、一部しか載せられませんでしたが、何かききたいことがあったらぜひ、彼に質問してください。今まで知らなかった世界が開けるはずです。
今後の大竹さんの活躍にエールを送りながら、筆をおきます。

       ☆大竹さんの写真絵本(福音館)たくさんのふしぎ・「ノースウッズの森で」2005年9月号と
        「春をさがして」2006年4月号は現在も入手可能です。
        大竹英洋さんのHPはこちらを!


Copyright(C) by 大竹 英洋

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